遠距離介護ダイアリー

東京と東北間での遠距離介護は突然始まりました。私はホームヘルパ ーを25年以上やっており色々な在宅介護を目の当たりにしてきました。人間誰にでも訪れる介護の話を日々綴っていきたいと思っています

健さんをおいて泊まりに行っちゃった

健さん(仮名、80歳、要介護3、統合失調症)

ご夫婦二人暮らし。

健さんが統合失調症を発症してからすでに10年。

昨年までは自分で歩く事が出来、食事も自分で台所まで

行って食べる事が出来た。

現在は布団の上での生活で、排泄全介助。

発語はほとんどなく、意思疎通困難。

こちらの言っている事はなんとなくわかっている。

 

そんな健さんの所に、私たちは月2回、身体介護で訪問しています。

髭剃りも月2回で、訪問のたびにぼうぼう。

 

健さんの奥様はとても気さくな方。農業を営み、自宅の外にある作業

小屋が奥様の職場。

だから、健さんを家の中においてお仕事をしています。

 

週末の夕方、健さんのケアマネさんから電話が来ました。

「健さんの奥さんが、毎年の1泊旅行に行くって連絡が来たんですけど

ヘルパーさん、急遽訪問をお願いできませんか。」

「今の健さんをおいていくんですか。」

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「そうなんですよ。奥さん、一人でおいていくつもりだったみたいだから

それはケアマネとしてはヘルパーさんに訪問してもらいたいって言いました。

そしたら、そうしてほしいって言ったから、ちょっと安心しましたよ。」

「奥様の年に1回のリフレッシュですからね。わかりました。私訪問しましょう。」

「よかった~。細かい事は奥さんと直接やりとりしてくれますか。」

「わかりました。了解です。」

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最初話を聞いたときは、全ヘルパーが、って思いました。

 

でもぎりぎりのところではありますが、何とか奥様を旅行にだしてあげたいと

思いました。

 

奥様に電話をすると、

「食べるものや飲み物は冷蔵庫に入れていくから、適当に食べさせてくれれば

それでいいです。これで安心して行ってこれます。」

って、いたって普通の会話でした。心の底では心配なんだとは思いますが、

そんなことは一切言いませんでした。

そういうあっけらかんとした奥様なんです。

 

それでいいと思います。

毎日介護介護と苦しんでいるより、自分のための時間を作ることは

決して悪い事ではないと思います。だってたった年に1回ですよ。

普段から奥様とは信頼関係もできており、何も心配しないで旅行に

行っていただける事って、事業所にとってもありがたい事だと思い

ます。それだけ信頼していただけて。

 

本日、夕方訪問してきました。

健さんはいつものように布団の上にいました。

排泄介助し、水分補給。食べ物を進めると

「いらね~」

でも、いなりずしを口に運んだら1口ぱくり。

ヨーグルトやコーヒーを時間をかけて食べていただき、なんとか

これでいいかな。

 

また明日の午前に訪問します。

奥様の帰宅は明日の夕方。

無事にお帰りになり、健さんにも変わりがなければ、

お役目終了です。