今日も母からの電話でのはなし。
「ちょっと、あたしね、また馬鹿をやっちゃって、
携帯電話をなくしちゃったのよ。やんなっちゃうわよ。」
またか。
「今日デイサービスでしょ。デイサービスに持って
行ったの?」
「そうよ。持って行ってね、いつもテーブルの自分の
前に置くのよ。」
「それで、持って帰ってきたの?」
「それがわからないのよ。だからね、デイサービスに
忘れてきたんじゃないかと思ってね。」
「デイサービスに忘れたんなら、必ず連絡が来るはず
だから、私は家の中にあると思うな。」
いつも大体家の中にあります。
「え~、それがないから困ってるんじゃない。」
「この前はデイサービスに持って行くバックの底に
入ってたからね。
私が電話を鳴らすから、デイサービスのバックを
持ってきて。」
「はい。わかりました。」
私になにか言われると、必ず「はい、わかりました」と言います。
「じゃあ、電話を一旦切るよ。電話かけてみるからね。」
電話を鳴らしましたが、出ませんでした。
再度家の電話にかけました。
「電話の音、聞こえた?」
「電話の音?あれお父さん、電話の音聞こえた?」
「お父さんも聞こえないって。」
電話の音?って。なんで疑問形なんだ。
意味が分かっていない。
「デイサービスから帰ってくれば、ベッドで休むよね。」
「そうね。だいたいちょこっと横になるわね。」
「その時、ベッドに携帯電話を持って行くでしょ。」
「そう、持って行って、立てるところに立てて
おくのよ。」
おそらく充電器に。
「じゃあ、おそらくそこにあると私は思う。
ベッドの所に行って。
もう一回電話鳴らすから。いい、ベッドの所に
行くんだよ。
電話切るからね。」
「はい、わかりました。」
電話をしばらく鳴らすと
「もしもし」
「あ~出たね。」
「出たねって、出るわよ。なあに?」
「なあに?」
「なあにって、何?」
「なんで、なんなの?」
すでに自分が電話をなくしたという話は忘れています。
「だから、電話があったんでしょ。」
「あるわよここに。それがどうしたの?」
ここまでくれば返す言葉がありません。
どうでもよくなりました。
「いいえ、何でもありません。」
そしたら、何かを思い出したんでしょう。
「お騒がせしてすみませんでした。」
吹き出すところでした。
どうですか。この会話。
自分の家族だったら怒りたくなりませんか。
笑えますか。
認知症の人との会話では、否定はタブーです。
あれ、最近タブーなんて言いませんか。
とにかく感情的になったら負けですから、受け入れるしかありません。
こんな会話が日常茶飯事。
また面白い会話があったら紹介していきます。
少しでも参考になればいいなと思います。