認知症の方に対する声掛けの中に「嘘も方便」というものがあります。
これについては賛否両論ありますが、確かに嘘なのかもしれませんが
決して騙すと言った要素はありません。
例えば、食欲がなくてなかなか食が進まない利用者さんに、ご家族が
届けてくれたお食事だと言って食べて下さるのであれば、低栄養の
リスクを避ける意味でもこれは一つの技法として考えて良いと私は
思います。
日常生活における健常者の方が使う嘘とは全く別のもので、あくまでも
寄り添うための嘘になります。
食事に対して拒否がある方に、食べさせてあげる良い方法とはどんな
方法でしょうか。
その正しい言葉と言うものがあれば嘘をつかなくても済みます。でも
そんな正しい言葉なんてありません。
そんな時に一つの話術としてこの嘘も方便の技法があるんだと思います。
実家の母も『デイサービスに行くと「(母)にしかできない仕事なのよ」
って言ってくれるから行かなきゃ。』と言って喜んで出かけていきます。
これ、悪い事ではありません。嘘であってもその人にやる気を与えて、忘れて
いた意欲を引き出してもらえる素晴らしい嘘だと思います。
これを、人を馬鹿にしてと取るか、ありがたいと取るかはそれぞれだと
思います。だから人によってケースバイケースではあります。
この田舎で使える一つの例として、尿臭がひどく衣類交換をなかなか
してくれないおばあちゃんに家族がギブアップしてデイサービス利用に
つなげ、初回の利用日に
「あらら、朝から畑仕事頑張ってきましたね。ズボンに泥んこがいっぱい
ですよ。ごめんなさい。泥が落ちるから着替えて下さいね。」
「え、ごめんなさい。」
と言ってすんなり着替えてくれるケースです。
泥なんかついていませんよ。でもこのおばあちゃんも全然傷つく
事はなくすんなり着替えに応じてくれます。
このことをご家族にお伝えするとすぐに真似して言ってみたそうです。
ズボンだけですが交換してくれたって。
その場その場で声掛けの内容を考え、問題点を改善していく事は
一つの認知症ケアの方法として嘘も方便を使っても問題はないと
思います。
そう考えると、日常でも認知症の方に接する場合の声掛けを
一つのとんちのように考えてあげれば、怒りたい時もちょっと
一呼吸おいてクイズの答えを探すように考えてくれればいいん
じゃないかなと思います。
認知症の人はすぐに忘れるから嘘をついても大丈夫。
↑ ↑ ↑
この考え方は失礼です。いけません。
嘘も方便の技法は決してそういう事ではありません。
明日また認知症サポーター養成講座を施設本体の学習会で、
包括の看護師さんの助手として行います。
認知症の方が住みやすい地域となれるように活動は続きます。