遠距離介護ダイアリー

東京と東北間での遠距離介護は突然始まりました。私はホームヘルパ ーを25年以上やっており色々な在宅介護を目の当たりにしてきました。人間誰にでも訪れる介護の話を日々綴っていきたいと思っています

利用者からの無言電話

 

 

 

 

私たちは訪問の仕事なので、事業所にはほとんどいません。

 

ですから電話も固定電話で出られない場合、携帯電話に転送される

様に設定されています。

 

訪問中だとなかなかすぐには出られませんが、着信がわかればかけ

なおして対応させていただきます。

 

事業所の固定電話はナンバーディスプレイが設定されていないので、

どなたからの電話なのかわかりません。

 

携帯電話に転送されると、お名前が出ますのですで、相手がわかった

上で電話に出る事が出来ます。

 

先日固定電話に無言電話がありました。

 

「はい、ヘルパーステーションです。」

 

「カチカチ、カチカチ」

 

「もしもし」

 

「カチカチ、カチカチ」

 

何かをたたいているような音を出しています。

 

言葉が発せない?

 

これは何だろう。どなただろう。

 

もしかして、パーキンソンのS美さん?

 

「S美さん?」

 

「カチカチ」

 

声を出してくれないので、どなたなのか確認ができません。

 

根気よく声をかけていたら、咳をしてくれました。

 

そこでS美さんだと確信しました。

 

「どうしましたか?旦那さんがいないんですか?」

 

「カチカチ、カチカチ」

 

「待っててください、これから行きますから。」

 

この方は平日旦那様不在時に訪問しています。

 

その日はお休みの日だったので、旦那さんがいるはずなんです。

 

それなのに電話をかけてくるなんて、なにかが起きています。

 

包括職員と急遽訪問しました。

 

家に到着すると、旦那さんの車があります。

 

あれ?旦那さんいるじゃないですか。

 

じゃあなぜ電話をかけてきたんですか?

 

いつものように声をかけながら居間に入らせてもらいました。

 

「S美さん、どうしましたか。」

 

「あ、どーも」 ←旦那さんもビックリ

 

旦那さまは寝ていた様子でした。

 

「旦那さまがいらしたから、大丈夫ですね。」

 

「嫌、帰らないで、そばにいて下さい。」

 

「え、S美さん。どうしたんですか。」

 

電話で聞こえたカチカチは、ガラケーの液晶部分に爪をたてて音をだして

いたんです。

 

 

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「何にも介護してくれないんです。だから帰らないでください。」

 

あれ、電話で呼び出されましたが、もしかして夫婦喧嘩だった?

 

旦那さんがそばにいたから声を出さないで音だけ出していたんですね。

 

ちゃんと喋れました。

 

服薬をしていなかったので、服薬だけして戻りましたが、私たちが

戻った後、ご夫婦は更に険悪なムードになってしまうのではないで

しょうか。

 

旦那さんはS美さんがヘルパーに電話をかけたことを知りませんでした。

 

助けてほしかったのはわかりますが、でもやっぱり旦那さんがいるのに

私たちは訪問するわけにはいきませんよ。

 

救急車を呼ぶような緊急時でなかったのは良かったんですが、でもこれが

頻繁にあるようだと困ります。

 

夫婦喧嘩の仲裁はできません。

 

良く旦那さんと話し合って、少しでも良い方向に持っていくように

してくださいね。

 

そしてあと無言電話はしないでください。お願いします。

 

 

 

 

 

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